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  • 2016年11月8日
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発達障害支援の学び方(中編)

発達障害サポーター’sスクールの村中です。

前回は発達障害支援を学ぶために知っておきたい3つのポイントの1つ目、
①「全体像から体系的に学ぶこと」についてお伝えしました。

発達障害支援の学び方(前編)

 

今回は2つ目の

②子どもたちの内側で起こっていること(脳や認知の特徴)を学ぶこと

についてお伝えします。

 

発達障害は見えにくい

発達障害、特に知的能力に遅れのないタイプの発達障害の理解や支援を難しくしている最大の理由は、何といっても発達障害の「見えにくさ」にあります。脳や神経の特異性に由来する発達障害は 、子どもたちを一見しただけでは障害の有無や特性がよくわからないことが多いのです。

その為、発達障害、もしくはその可能性のある子どもたちと関わる際に「見えにくいものを何とか見ようと努力する」ということがよく起こります。

つまり、目で見て確認出来る行動レベルの特徴を探して対応しようとするということです。

具体的には、

「視線が合わないから・・・」
「コミュニケーションがうまく取れないから・・・」
「落ち着きなく動き回っているから・・・」   など

こういった発達障害の「目につく特徴」を見つけたり探したりして、子どもたちを理解しようとします。

しかしながら、こういった目につく特徴を探すという方法だけで子どもたちを理解しようとする試みは
発達障害の支援という視点で見ると不十分と言わざるをえません。
(不要ということではなく、あくまでそれだけでは不十分というところがポイントです)

 

目につく特徴だけで理解することの課題点

仮にある人が発達障害の、見て確認出来る特徴をたくさん学び、そしてその特徴のいくつかをあるお子さんに見つけたとします。その人は学んだ知識を活かし、「この子は発達障害かもしれない!」と考えることでしょう。見えにくい発達障害に気づいただけでも、かなりの前進です。

しかしながら、目に見える特徴だけで子どもたちを理解し、支援しようとすることには、少なくとも2つの大きな問題があります。

①その特徴は本当に発達障害に由来するのか?

まず1つめの問題としては、その時目についた見た目の特徴だけで判断することは判断の正確性の面で非常に危険だということがあります。例えば、そのお子さんには「周囲の人とあまり視線が合わない」という特徴があったとします。視線が合わない(合いにくい)という特徴は、自閉症スペクトラム障害の特徴としてよく知られた特徴です。

しかしながら、その行動は本当に自閉症スペクトラム障害の特徴の現れなのでしょうか?単にシャイな性格なだけかもしれませんし、最近嫌なことがあって人と接するのが嫌になっているだけかもしれません。もしかしたら、悪さをして罪悪感から人の目を見れないだけかもしれないのです。

つまり、実際は発達障害ではないお子さんを、発達障害と思い込んで勘違いをしているだけかもしれないのです。その時目についた特徴だけで理解しようとすると、こういった誤解が発生しやすい傾向があります。

こういった誤りを回避するためには、最低限、発達障害の様々な特徴を網羅的に把握し、かつそのお子さんと長い時間関わって、その行動が一時的な反応ではなく恒常的な特徴であることを確認する必要があります。

しかしながらこういった取り組みをしたとしても、見た目の特徴だけで正しく理解しようとすることには限界があると考えたほうがよいでしょう。

②どうすればいいかわからない

もう一つの問題は、見た目の特徴だけをどれだけ知っても、「じゃあどうすればいいの?」という疑問にはあまり答えられないことです。支援という視点で見ると、実はこちらのほうがより深刻で大きな問題です。

支援というのは、その人とどのように関わればいいのか、つまり何を、いつ、どのように伝えたり提示したりすればいいのか、こういった1つ1つの取り組みの積み重ねです。見た目の特徴の知識は、そのお子さんが「発達障害かどうか」ということを考えるのには役立ちますが、そのお子さんとどう関わればいいのか、具体的な支援の手立てを考えることにはつながりにくいのです。

つまり、見た目の特徴だけで理解しようとする行為は、単なる「レッテル張り」に終わってしまう危険性が強くあるのです。

 

内側のしくみを知ることで、理解が多面的になり深まる

ではどうすればいいのか?
必要なのは、視点を外側だけでなく内側にも向けることです。

発達障害の支援の実践には、その人の目に見える特徴だけでなくその人の内側で起こっていることを理解しようとする視点が求められます。内側とは脳や神経の特異性に由来する、その人の認知面や心理面の特徴を理解するということです。つまり、見えないものを無理に見ようとするのではなく、見えない内側のしくみを理解することが大切だということです。

認知面や心理面での理解というと難しいことのように思ってしまうかもしれません。ですがもう少し具体的に言い換えると、その人が自分の周囲の世界をどう認識し、どう感じ、どう考えているのかということです。前提として、脳や神経の個性が異なっている発達障害の人たちは、世の中にいる多数派の人たちとは異なる方法、感覚、考え方でこの世界を認識しているのです。その違いに目を向けて理解しないことには、本質的にその人を理解し、支援の実践を進めることは難しいと私は思っています。

発達障害の人の特徴は、目で見て確認出来る行動レベルの特徴ではなく、それらの行動を生み出す源泉となるその人なりの物事の捉え方や、感じ方、理解、表現の仕方に本質的特徴が現れるのです。

このレベルまで理解することで初めて、「なぜこういう行動をするのか?」「どうしてこういう言い方になるのか?」など、その人の行動の背景を推測し仮説を持つことが出来るようになります。その考えの先に「じゃあこうすればいいのでは?」「きっとこうすればうまくいく」など、課題解決の糸口が生まれるのです。

 

今回はそろそろこの辺で失礼します。

次回は3つ目のポイントについて解説させて頂きます。

それでは!

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