発達障害サポーターズスクール

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  • 2017年8月4日
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発達障害の子どもたちに学習支援が必要な理由 【後編】

こんにちは。
発達障害サポーター’sスクールの村中です。

今回は「発達障害の子どもたちに学習支援が必要な理由」をテーマにしたコラムの最終回となります。

前々回前回のコラムでは、発達障害の子どもたちへの「学習支援の必要性」や「支援の方法論や可能性」という視点からお話をさせて頂きました。今回はこのコラムの結びとして、「学び方を学ぶ」という視点から学習支援の重要性についてお伝えさせて頂きます。

 

理由③:「学び方を学ぶ」ことに最も適した支援領域が学習支援である

 ○「学び方を学ぶ」ことの重要性

3つ目の理由は少し視点を変えて「学び方を学ぶ」ことの重要性から、述べたいと思います。
発達障害の有無に関わらず、これからの時代を生きる子どもたちは大人になってもずっと「学び」続けなくてはいけない世代であると考えられています。ここ数年で話題になっている事だけでも以下のようなことが言われています。

「今後10~20年程度で、アメリカの総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」
(マイケル・A・オズボーン氏(オックスフォード大学准教授))

「2011年度にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」
(キャシー・デビッドソン氏(ニューヨーク市立大学教授)の予測)

 

これらの予想の真偽はおいておいたとしても、これからの社会が今まで以上に変化の大きな社会となっていくことについては疑いの余地はないのではないでしょうか。

変化が大きな時代とは、「何」を学んでおけばよいかの予測が難しい時代と言い換えることが出来ます。身に着けた知識や技術はすぐに古くなり役に立たなくなってしまう、そんな時代です。そんな時代を生き抜いていかなくてはいけない子どもたちは、子どもの時代にどんな「知識、技能」を身につけることが出来たか、よりも「自分がどうやったら効果的に学べるのか」を知り、「自分に合った学び方」を身につけることの重要性が高まると思われます。自分に合った学び方を知っていれば、何か新しい知識や技能を身につけることが必要となった時に、スムーズかつ効率的にそれに取り組むことが出来、時代の流れや変化に対応した生き方を選択することが出来る可能性が高くなるからです。

そしてこの「(知識や技能の)学び方を学ぶ」ということに最も適した支援領域は、実は学習支援領域なのです。もちろん生活スキルや社会的なスキル獲得の支援においても「学び方を学ぶ」ことは可能です。ですがやはり、そもそも知識や技能を身につける領域である学習支援領域が最も学びの適応への距離が近く、学び方をテーマとしやすい領域なのです。また、学習領域は数値化することなどで「出来ない」→「出来た」という、学びの成果を短時間で明確にフィードバックしやすいという特徴があり、これも学び方を学ぶことに適している要因の1つです。

○発達障害の子どもたちは「学び方を学ぶ」ことが難しい現実がある

そして、発達障害の子どもたちは「学び方を学ぶ」ことが難しい現状があります。それは発達障害の子どもたちの脳や神経の特異性が「見えにくく、わかりにくい」ところに大きな原因があります。そして、特性が「見えにくく、わかりにくい」ことは子どもたちが子どもたち自身を理解する場合にもあてはまります。その為、得手と不得手の落差が大きい傾向がある発達障害の子どもたちが「自分は何が得意で、何が苦手なのか」を子どもたち自身で気づいたり理解することはとても難しいことです。自力で自分の特性を把握し、それに対処する形で道を切り開いていかれる人も確かにおられますが、それは全体をみるとかなりの少数派です。

つまり発達障害の子どもたちの多くは、自分に合った学び方を知らないのです。そして一般的な方法が自分に合わなかった場合、とても残念なことに子どもたちは「不得手な方法だから出来なかった」と考えるのではなく、「僕は出来ないのだ」「私はばかなの?」などと自身を否定的に感じ、「過度な自尊心低下」につながってしまうことが多いのです。そのため得手不得手という発想以前に「出来ない」現実に押しつぶされてしまいます。こうなると、学び方を工夫して自分に合った方法を見つけるという取り組みの経験を得ること自体が、子どもたちにとってとてもハードルが高く難しいことということになります。

以上のことから、発達障害の子どもたちが「学び方を学ぶ」ためには、まず専門性の高い支援者が子どもたちの得手不得手を専門的かつ詳細に理解し、その子どもに合った方法を子どもたちに提示してあげることが必要なのです。そしてその後に、子ども自身の自己理解を深める取り組みをしていくことで始めて、「自分に合った学び方を身につける」ことが達成されるのです。

 

まとめ:専門性の高い支援者による「適切な学習支援」が子どもたちに提供できるもの

発達障害の子どもたちに「学習支援」が必要な理由を以下の3つのポイントでお伝えしてきました。

【発達障害の子どもたちに学習支援が必要な理由】
理由①:学力獲得の困難が子どもたちの不適応の大きな要因になっている現実がある
理由②:学び方の工夫によって改善できることがたくさんある
理由③:「学び方を学ぶ」ことに最も適した支援領域が学習支援である

これらのことから、専門性の高い支援者による適切な学習支援が発達障害の子どもたちに提供できるものは、「高い学力」や「進路の選択肢の広がり」というような一般的な価値だけななく、「過度な自尊心低下の回避」や「自分に合った学び方の習得」といった生きていく上で根本的に必要となるような内容にまでその影響が及ぶことをお伝えしてきました。

しかしながら、このコラムの最初にお伝えした通り、子どもたちの脳や神経に由来する特徴や能力の凸凹を正しく理解し、その子どもに合った方法を提示することのできる専門性の高い学習支援者はあらゆる地域、支援年齢層で不足している現実があります。このコラムをきっかけに学習支援の重要性や価値をご理解頂き、子どもたちの支援にご協力いただける方が1人でも多く増えましたらとても幸せです。

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