発達障害サポーターズスクール

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  • 2017年7月4日
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発達障害の子どもたちに「学習支援」が必要な理由(中編)

こんにちは。
発達障害サポーター’sスクールの村中です。

今回も「発達障害の子どもたちに学習支援が必要な理由」
をテーマにコラムの続編をお届けしたいと思います。

前回のコラム 発達障害の子どもたちに「学習支援」が必要な理由(前編) では、発達障害の子どもたちの「学力不振が子どもたちに与える負の影響」から支援の必要性を説明させて頂きました。
今回は、「支援の方法論や可能性」という視点から支援の必要性についてお話をさせて頂きます。

 

理由②:学び方の工夫によって改善できることがたくさんある

発達障害の子どもたちに学習支援が必要な理由の2つめとしては、この問題には解決できる余地や可能性があるということがあげられます。「発達障害の子どもたちが深刻な学力不振になるのは仕方がない。だって『障害』なんだから。」そう考えている人もおられることでしょう。でもそれは本当にそうなのでしょうか?
私たちは発達障害の子どもたちの学力不振は予防や回避、また克服出来るケースがたくさんあると考えています。また、実際に適切な支援を提供することで学力が伸びた子どもたちもたくさん知っています。そしてそういった子どもたちに適切な支援が提供されず、長期にわたって多数放置されてしまっていることは、この少子化の時代においてとても大きな社会的損失ではないかと思っています。

○知的能力に問題がないのに学力不振が起きる理由は無数に存在する

そもそも本テーマでお話している発達障害の子どもたちは、前回も繰り返しお伝えしたように「知的能力に大きな遅れや問題がない」子どもたちです。知的能力と言うのは、日常用語に置き換えると「かしこさ」や「考える力」のことなどを指します。賢明な読者の皆様はここで1つの疑問を持たれることでしょう。

「あれ?知的能力に問題がないのに学習が苦手ってどういうこと?一体何が起きているの?」
「かしこさや考える力に問題がないのに、勉強が苦手なの? どうして?」

そうなのです。
一見すると矛盾するように思えるこの現象が、なぜ起こっているのかを理解することが、発達障害の子どもたちの学習支援の必要性や求められる支援の中身を理解するためにとても重要な視点となります。

実は、学力獲得の困難は本当に様々な要因で簡単に起きてしまう複雑で複合的な現象です。
目で見る力がちょっと苦手なだけでも、人よりちょっと注意が逸れやすいだけでも、また手先が不器用なだけでも、もっと言えば先生の説明の方法がその子どもの理解の仕方に合っていないだけでも、学力不振の最初の躓きはやってくるのです。そしてその躓きを少しばかり放置するだけでどんどん学力の遅れは拡大し、やがて大きな学力の遅れとともに「苦手意識」や「意欲の低下」という子どもたちの心理的な面にまで影響を及ぼします。
このことは、発達障害のない一般の子どもたちでも構造自体は同じです。どんな子どもの学力不振も、元をただせば小さな躓きから始まります。その中でも特に発達障害の子どもたちが学力不振になりやすいのは、躓きの入り口の数が多く、またなぜ躓いてしまうのかが周囲にとって非常にに分かりにくいところにあります。発達障害の子どもたちの学力不振は、単純な「努力不足」や「やる気の問題」「根性の欠如」といった精神論的な問題ではないのです。

○なぜ出来ないかを明確にし「その子どもに合った学び方で学ぶ」ことで改善できることがたくさんある

発達障害の子どもたちの最も大きな特徴は、脳や神経の性質が様々な面で一般の子どもたちと異なっているところにあります。これは単純な優劣の問題というよりも、偏りや凸凹の落差と考えるべき面の大きい特徴です。それゆえ、「得意、苦手」「合う、合わない」の落差が大きく、その子どもの個性、特性に合った方法でないと学習の成果が出にくい傾向があります。
逆に言うと、その子どもに合った適切な方法さえ選択することが出来れば、その子どもの知的発達水準相当の学力を身につけることが出来る可能性があるということになります。ただし、その「合う方法」を見つけるためには勘や経験則ではない、学習や認知に関する専門知識が必要となります。つまり支援者側に高い専門性や技能が求められるのです。

また「合う方法」が見つかったとしてもその方法が、その他の大多数の子どもたちにとっては馴染みにくかったり、取り組みにくい方法であったりすることもしばしばあります。そのため、その子どもへの対応を個別的に出来る環境を整えてあげる必要があります。そしてそういった対応にはどうしても物理的な労力や、経済的負担、人員配置上の問題がついて回ります。
ただ、こういった制約や条件があるにせよ「その子どもに合った学び方」を提供することの価値は、もっと広く世の中に認められてもよいのではないでしょうか。
子どもたちの学び方の癖や個性を正確に把握し、それに合った支援を提供することで子どもたちが本来の能力を発揮し、のびのびと学ぶことが出来る場合も少なくないのです。

そして、「子どもたちに合った学び方」を提供する支援は単なる「学力獲得」以上の価値や影響力を子どもたちに提供することにもつながります。次回はその側面からお話しさせて頂ければと思います。

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