発達障害サポーターズスクール

発達障害の子どもたちに学習支援が必要な理由

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発達障害の理解や支援について社会的な関心が高まっている現状がありますが、まだまだ支援ニーズに供給が追いついていないのが現状です。そして学習支援領域はその中でも特に適切な支援が不足している領域の1つだと私たちは考えています。
今回は、子どもたちへの支援が少しでも充実していくために、そもそもなぜ発達障害の子どもたちに学習支援が必要なのかについてご説明させて頂きます。

学習支援が必要な3つの理由

発達障害の子どもたちに適切な学習支援が必要な理由は、大きく考えて3つあると考えています。

 

 理由①:学力獲得の困難が子どもたちの不適応の大きな要因になってしまっている
 理由②:学び方の工夫によって改善できることがたくさんある
 理由③:「学び方を学ぶ」ことに最も適した支援領域が学習支援である
 
これらの理由について順にご説明させて頂きます。

 

理由①:学力獲得の困難が子どもたちの不適応の大きな要因になっている現実がある

まず、1つめの理由からお話しします。
それは学力獲得の困難が子どもたちの社会的不適応、つまり生きにくさの大きな要因となってしまっている、厳然たる事実があることです。もちろん子どもたちの社会的不適応の原因となる要因は、学力不振以外にもたくさんあります。ですが、子どもたちの人生への影響の大きさという意味で、学力不振の問題は無視できない大きな課題の1つであると思います。

○発達障害の子どもたちの多数派は学力獲得困難の状態にある

小中学生を対象とした文部科科学省調査(H24)によると、全国の一般の小中学校における(発達障害の可能性が高いと考えられる)特別な教育的支援を必要とする児童生徒の割合が全体で6.5%いると報告されています。また発達障害の子どもたちの内訳として、学習面で深刻な困難(広義の学習障害) を抱えている子どもたちが、子どもたち全体の4.5%いると報告されています。6.5%と4.5%ですので、単純な比較割合で言うと69.2%となります。この調査結果から考えると、発達障害の子どもたちの約7割が学力獲得困難状況にあると推測されます。
また、この調査は「全般的な知的発達に大きな遅れがないこと」が調査の前提となっています。 つまり、発達障害の子どもたちは知的能力が劣っているわけではないのに大きな学力の問題を伴っている場合が多いのです。学力獲得に困難がないタイプの子どもたちはむしろ少数派であるということが予想されます。

○自尊心の傷つきによる二次障害の問題

知的な能力の遅れがないにも関わらず極度の学力不振である」という事実の、最も重要でかつ深刻な問題は、子どもたちの自尊心に関する問題です。学力不振を抱えている発達障害の子どもたちにとって勉強の時間は苦痛や傷つきに満ちた苦しい時間です。分からない授業をただただ聞き続けることも、友人たちよりも低い点数や成績を毎回つきつけられることも、すべて子どもたちの自尊心を損なうのに十分な材料です。
こういった状態が長く続くことで、子どもたちの自尊心が大きく損なわれ「どうせ出来ないし。」「ぼく(わたし)ばかだし。」などというような無気力状態に陥ってしまいます。最悪の場合は、二次障害と呼ばれる状態を生み出してしまいます。二次障害とは心の傷つきが生み出す生きにくい状態のことです。心の病や引きこもり、非行、犯罪など二次障害を引き超すことは子どもたちの人生に大きな負の影響を与えてしまいます。そして学力不振が引き金となって二次障害が起こる事例は、残念なことに少なくないのです。

 

理由②:学び方の工夫によって改善できることがたくさんある

発達障害の子どもたちに学習支援が必要な理由の2つめとしては、この問題には解決できる余地や可能性があるということがあげられます。「発達障害の子どもたちが深刻な学力不振になるのは仕方がない。だって『障害』なんだから。」そう考えている人もおられることでしょう。でもそれは本当にそうなのでしょうか?
私たちは発達障害の子どもたちの学力不振は予防や回避、また克服出来るケースがたくさんあると考えています。また、実際に適切な支援を提供することで学力が伸びた子どもたちもたくさん知っています。そしてそういった子どもたちに適切な支援が提供されず、長期にわたって多数放置されてしまっていることは、この少子化の時代においてとても大きな社会的損失ではないかと考えています。

○知的能力に問題がないのに学力不振が起きる理由は無数に存在する

そもそも本テーマでお話している発達障害の子どもたちは、前回も繰り返しお伝えしたように「知的能力に大きな遅れや問題がない」子どもたちです。知的能力と言うのは、日常用語に置き換えると「かしこさ」や「考える力」のことなどを指します。それなのになぜ子どもたちはこんなにたくさん学力不振に陥ってしまうのでしょうか?

実は、学力獲得の困難は本当に様々な要因で簡単に起きてしまう複雑で複合的な現象です。
目で見る力がちょっと苦手なだけでも、人よりちょっと注意が逸れやすいだけでも、また手先が不器用なだけでも、もっと言えば先生の説明の方法がその子どもの理解の仕方に合っていないだけでも、学力不振の最初の躓きはやってくるのです。そしてその躓きを少しばかり放置するだけでどんどん学力の遅れは拡大し、やがて大きな学力の遅れとともに「苦手意識」や「意欲の低下」という子どもたちの心理的な面にまで影響を及ぼします。
発達障害の子どもたちが学力不振になりやすいのは、躓きの入り口の数が多く、またなぜ躓いてしまうのかが周囲にとって非常にに分かりにくいところにあります。発達障害の子どもたちの学力不振は、単純な「努力不足」や「やる気の問題」「根性の欠如」といった精神論的な問題ではないのです。

○なぜ出来ないかを明確にし「その子どもに合った学び方で学ぶ」ことで改善できることがたくさんある

発達障害の子どもたちの最も大きな特徴は、脳や神経の性質が様々な面で一般の子どもたちと異なっているところにあります。これは単純な優劣の問題というよりも、偏りや凸凹の落差と考えるべき面の大きい特徴です。それゆえ、「得意、苦手」「合う、合わない」の落差が大きく、その子どもの個性、特性に合った方法でないと学習の成果が出にくい傾向があります。
逆に言うと、その子どもに合った適切な方法さえ選択することが出来れば、その子どもの知的発達水準相当の学力を身につけることが出来る可能性があるということになります。ただし、その「合う方法」を見つけるためには勘や経験則ではない、学習や認知に関する専門知識が必要となります。つまり支援者側に高い専門性や技能が求められるのです。

子どもたちの学び方の癖や特徴を正確に把握し、それに合った支援を提供することで子どもたちが本来の能力を発揮し、のびのびと学ぶことが出来る場合も少なくないのです。

理由③:「学び方を学ぶ」ことに最も適した支援領域が学習支援である

 ○「学び方を学ぶ」ことの重要性

3つ目の理由は少し視点を変えて「学び方を学ぶ」ことの重要性から、述べたいと思います。
発達障害の有無に関わらず、これからの時代を生きる子どもたちは大人になってもずっと「学び」続けなくてはいけない世代であると考えられています。それは社会の変化が早く大きい時代だからです。

変化が大きな時代とは、「何」を学んでおけばよいかの予測が難しい時代と言い換えることが出来ます。そんな時代を生き抜いていかなくてはいけない子どもたちは、子どもの時代にどんな「知識、技能」を身につけることが出来たかよりも「自分がどうやったら効果的に学べるのか」を知り、「自分に合った学び方」を身につけることの重要性が高まると考えられます。

そしてこの「(知識や技能の)学び方を学ぶ」ということに最も適した支援領域は、学習支援領域なのです。もちろん生活スキルや社会的なスキル獲得の支援においても「学び方を学ぶ」ことは可能です。ですがやはり、そもそも知識や技能を身につける領域である学習支援領域が最も学びの適応への距離が近く、学び方をテーマとしやすい領域です。また、学習領域は数値化することなどで「出来ない」→「出来た」という、学びの成果を短時間で明確にフィードバックしやすいという特徴があり、これも学び方を学ぶことに適している要因の1つです。

○発達障害の子どもたちは「学び方を学ぶ」ことが難しい現実がある

そして、発達障害の子どもたちは「学び方を学ぶ」ことが難しい現状があります。それは発達障害の子どもたちの脳や神経の特異性が「見えにくく、わかりにくい」ところに大きな原因があります。そして、特性が「見えにくく、わかりにくい」ことは子どもたちが子どもたち自身を理解する場合にもあてはまります。その為、得手と不得手の落差が大きい傾向がある発達障害の子どもたちが「自分は何が得意で、何が苦手なのか」を子どもたち自身で気づいたり理解することはとても難しいことです。自力で自分の特性を把握し、それに対処する形で道を切り開いていかれる人も確かにおられますが、それは全体をみるとかなりの少数派です。

つまり発達障害の子どもたちの多くは、自分に合った学び方を知らないことが多いのです。そのため得手不得手という発想以前に「出来ない」現実に押しつぶされてしまいます。こうなると、学び方を工夫して自分に合った方法を見つけるという取り組みの経験を得ること自体が、子どもたちにとってとてもハードルが高く難しいことということになります。

発達障害の子どもたちが「学び方を学ぶ」ためには、まず専門性の高い支援者が子どもたちの得手不得手を専門的かつ詳細に理解し、その子どもに合った方法を子どもたちに提示してあげることが必要です。そしてその後に、子ども自身の自己理解を深める取り組みをしていくことで始めて、「自分に合った学び方を身につける」ことが達成されるのです。
 
以上、3つの視点から、発達障害の子どもたちに学習支援が必要な理由についてご説明させて頂きました。長文にお付き合いいただきありがとうございました。
このコラムをきっかけに学習支援の重要性や価値をご理解頂き、子どもたちの支援にご協力いただける方が1人でも多く増えましたら幸いです。
 
 
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